Little John(リトル・ジョン)Text by Dub Store Sound Inc.
ダンスホールの現場にてその実力を示したヴォーカリスト。特徴のある歌声で幼少期より第一線で活躍した。サウンド・システムでのパフォーマンスにおいて彼の魅力は大いに発揮され、現場での臨場感をそのままレコードにしたような強力な作品を残した事でも高い評価を得ている。
Little John
本名 |
John Mcmorris |
出生 |
1970年 |
出身地 |
ジャマイカ キングストン ウェスト・インディーズ |
1970年代後半に台頭したジャマイカン・ポピュラー音楽の新しい形、ダンスホールの登場と共にステージへと登場したシンガー。この10歳にも満たない少年は、サウンド・システムで大きなセンセーションを巻き起こした。新しい世代のディージェイが次々と登場し、その勢いを増す中、彼等に対抗しうる強力な存在感を持ったヴォーカリストとして大きな存在感を示したのがこのリトル・ジョン(Little John)である。ディージェイたちの様な即興性のあるリリック、目立った個性を感じさせる癖のある歌声と独特のシングジェイ・スタイルは彼の大きな武器となり、サウンド・システムの現場を大いに沸かせて見せたのである。
彼もまた多くのパフォーマーと同様に、数々のサウンド・システムを巡業しそのスキルを磨いた。ロマンティック・ハイ・ファイ(Romantic Hi Fi)、キラマンジャロ(Killamanjaro)、ジェミナイ(Gemini)、ヴォルケーノ(Volcano)といったシステムで揉まれたリトル・ジョンは第一級のエンターテイナーとして成長していった。彼の最大の魅力は、ライブ・パフォーマンスで見せるそのラフなスタイルをレコード上でも表現出来たことであろう。彼が残した初期の重要作品、'Robe'や'What Is Katty'はエロール・ドン・メイス(Errol Don Mais)のルーツ・トラディション(Roots Tradition)にて録音された。ソウル・シンジケート(Soul Syndicate)や後にルーツ・ラディックス(Roots Radics)となるメンバーたちによるラフでタフなリズムはたちまち評判となり、リメイクが中心ながらもその斬新なサウンドは、新しい時代の幕開けを感じさせる物であった。声変わり以前の1979年、若干9歳当時の録音ながら、'Robe'は"Bobby Babylon"、'What Is Katty'は"Answer"と2つのリズムを見事に乗りこなしている。'What IS Katty'は1988年にファイヤーハウス(Firehouse)にて再演されており、そちらも注目である。
デビューから彼のキャリアは華々しい物であったが、ヘンリー・ジュンジョ・ロウズ(Henry 'Junjo' Laws)のヴォルケイノ、ジョージ・パン(George Phang)のパワー・ハウス(Power House)からの作品では更に成熟したパフォーマンスを聴くことが出来る。ヴォルケーノからはアル・キャンベル(Al Campbell)とのコンビネーションで'Mash It Already'が大ヒット。力強いヒューマン・トラック、"Answer"に乗せた2人のコンビネーションが冴え渡るダンスホール・チューンである。更にバーリントン・リーヴィ(Barrington Levy)、'Dances Are Changes'の替え歌、'Cocaine'やタイトル通りのダンスホール・ネタ、'Dance Hall Style'といった良曲も残している。パワー・ハウスからは、'First Cut Is The Deepest'をネタにしたジョジー・ウェルズ(Josey Wales)とのコンビネーション、'Dance & Studio'が今尚、現場で高い人気を誇り、もう一つの代表作、'True Confession'と共にダンスホールでは欠かせない人気曲となっている。
その他ミッドナイト・ロック(Midnight Rock)、ブラック・ルーツ(Black Roots)、ファイヤーハウス、ジャミーズ(Jammys)、ペントハウス(Penthouse)と多くのトップ・レーベルに録音を残したリトル・ジョンは長年トップ・アーティストとして活躍した。先にも述べたが現場でのラバ・ダブさながらのパフォーマンスを聴ける彼のレコードは臨場感に溢れ、サウンド・システムの盛り上がりを現代まで伝えるかの様な熱気に満ちている。
2019/05/10 掲載