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Delroy Wilson（デルロイ・ウィルソン）Text by Harry Hawks

デルロイ・ウィルソンは彼の同世代アーティストたちと比べて、熱烈なレゲエ・リスナーを除いてはけっして認知され敬意を放たれてきたように見えない。しかし、彼は数多くのシンガーや作曲家を生み出していることで知られるジャマイカが輩出した素晴らしいシンガー・ソングライターの1人である。

Delroy Wilson

出生	1948年10月5日
死没	1995年3月6日
出身地	ジャマイカ　キングストン
関連アーティスト	Alton Ellis Bob Marley, The Wailers Dennis Brown Ken Boothe Slim Smith

「デルロイ・ウィルソン(Delroy Wilson)、この若い男はエンターテイメント産業で珍しい存在だった。彼は長年のキャリアを可能にした忍耐力と技術を持ち合わせた究極の青年だった。それに彼は洗練されたスタイルを持っていて、こういったすべては彼の歌に聞くことができた。だから彼は世界中から無数のファンを獲得したんだ」ジャッキー・エスティック(Jackie Estick)

1948年10月5日にジャマイカのキングストンで生まれたこの活発な少年はボーイズ・タウン・スクールに通いながら、13歳という年齢でエンターテイメントの世界でデビューを飾った。スタジオ・ワン(Studio One)のコクソン・ドッド(CS Dodd)のためにヒット曲を次々と発表、彼のデビュー曲'Emy Lou'はすぐさまヒット、それに続いた'Beautiful Baby'、'I Shall Not Remove'、'Joe Liges'もヒットし、時代もあってか彼はミスター・ドッドに代わってライヴァルのレコード・プロデューサーやサウンドシステムへの攻撃にも手を貸した。'Joe Liges'と'Spit In The Sky'の両楽曲はプリンス・バスター(Prince Buster)に向けたもので、'King Pharoah'ではミスター・ドッド自身がプリンス・バスターのことを悪名高いファラオ王子呼び、「くたばれと言ったら、本当にくたばれって意味しているんだ」と珍しくレコードに登場したほどだった。

デルロイはコクソンお抱えアーティストの中でも最前線を行く存在で音楽制作における要でもあった。彼はラブソング、社会的な楽曲、宗教的な歌、すべての種類の歌を独特なスタイルで歌った。スカからロックステディへとリズムがゆっくりになってもデルロイの声は発展と成熟を増し、'Riding For A Fall'、'Rain From The Sky'、'Never Conquer'、'I Don't Know Why'、'True Believer'、'Feel Good All Over'、そしてザ・タムズ(Tams)のロックステディ楽曲'Dancing Mood'を優しげなスカ楽曲に変えた同タイトルなどのヒットを立て続けに発表していった。これらすべての楽曲は今も当時のリリースから少しも変わらず美しさを失っていない。

その後、あまり長続きしなかったがデルロイはストレンジャー・コール(Stranger Cole)とレーベルW&Cを設立、ドニー・エルバート(Donnie Elbert)の'Will You Ever Be Mine'をカバーした'I Want To Love You'がヒット。この楽曲はジャマイカにおける70年代のモダンミュージックを形成するひとつの要素になった。

60年代も終わりに近づくとデルロイは一時的にバニー・リー(Bunny Lee)の元で録音するがその当時をトニー・ラウンス(Tony Rounce)は「でも当時、バニー・リーは偉大なロイ・シャーリー(Roy Shirley)、ユニークス(Uniques)、グレン・アダムス(Glen Adams)などとの活動で成功していてデルロイは決して成功しているとは言えなかった」と振り返った。その後、彼はソニア・ポッティンジャー(Sonia Pottinger)のレーベル、ハイ・ノート(High Note)のために録音を始め、'It Hurts'と'Put Yourself In My Place'がジャマイカとイギリスで大ヒットした。デルロイは再びバニー・リーのもとに戻り、最初の録音'Better Must Come'を完成させ、1971年の総選挙でマイケル・マンリーが力を手にしようとする際、人民国家党のキャンペーン・ソングに起用された。

「...この音楽が人々に届き選挙に勝ったんだ」バニー'ストライカー'リー

「俺は政治家、若者のために'Better Must Come'みたいな歌を作ったんだけど、PNPが選挙に勝つため使ったんだ」デルロイ・ウィルソン

これに続いてストライカー・リーは永久不滅の名曲'Cool Operator'を発表、さらに'Here Come The Heartaches'、''Who Cares'が続いた。またデルロイは彼がスタジオ・ワンに残したヒット曲、'Never Conquer'や'Dancing Mood'を彼のために再演したのだった。

ジャマイカ人ヴォーカリストたちの最前線に残り、デルロイはカバー曲やオリジナル楽曲の録音をキングストンのトップ・プロデューサーたちのために行った。それらにカリブ・ディス・コ(Carib Dis Co)の素晴らしい'This Life Makes Me Wonder'、ジョー・ギブス(Joe Gibbs)の下で録音し穏やかに女性について厳しく歌った'Pretty Girl'などが挙げられる。1973年も終わりに近づくと彼はエインズリー・フォルダー(Ainsley Folder)がリー'スクラッチ'ペリー(Lee Perry)のもとに残した'To Be A Lover'/'I Forgot To Be Your Lover'リズムを起用した'Have Some Mercy'を歌った。バニー・リーは「デルロイはただスタジオに出入りしてフリーランスみたいだったんだ」と思い出して語るがこの楽曲はモンスターヒットを記録し、オーガスタス・パブロ(Augustus Pablo)の'Pablo's Mercy'やジャー・ロイド(Jah Lloyd)の'Soldier Round The Corner'など無数のヴァージョンを生み出すきっかけとなった。フーキム兄弟(Hookim Brothers)のためにチャンネル・ワン(Channel One)で制作した作品にはザ・スピナーズ(The Spinnners)の'It's A Shame'の素晴らしいカバー・ヴァージョンなどが含まれ、この作品は1974年から95年にかけてレゲエ界で支配的だったバニー・リーの悪名高き'フライヤーズ'スタイルのリズムを生み出す創造力として使われたのだった。

デルロイ・ウィルソンがクロスオーバーとなるヒットを放つことはなかったがフェデラル(Federal)でロイド・チャーマーズ(Lloyd Charmers)によって制作されたザ・ウェイラーズ(The Wailers)のカヴァー曲'I'm Still Waiting'傑作の一つに挙げられるだろう。イギリスでは大ヒットを記録したがレーベルLTDの高いプレリリースの輸入シングル盤として出回っただけだった。同じくフェデラルでロイド・チャーマーズによって制作され、イギリスのナショナル・チャートで1位を獲得したジョン・ホルト(John Holt)の'Everything I Own'に続いて大きな人気を集めるもイギリスで公式リリースされることがなかった。

80年代にデジタル・リズムが主要になった際もデルロイはキング・ジャミー(King Jammy)のもとで素晴らしい'Don't Put The Blame On Me'などを録音、ストライカーのもとではガッシー・クラーク(Augustus Gussie Clarke)の'Rumours'リズムを使った'Ease Up'を制作した。

デルロイは様々なプロデューサーのために録音しヒット曲を輩出するも現在はレゲエ音楽の専門家に偉大なアーティストの1人として考えられているだけで、哀愁の漂う偽りのない彼のアプローチはレゲエが見つけた新しいリスナーにはなかなか届かなかった。しかし、これまでと同じレゲエのリスナーの間で人気だっただけでなく、多くのシンガーたちが彼を愛した。影響力を持つからこそデルロイは流行を追いかけることなく、自身のキャリアに終焉が見え始めると若手アーティストに追いやれていったが、彼等のパフォーマンスにデルロイが持ち合わせた壮大さを少しも期待することは出来なかった。

デルロイ・ウィルソンは1995年3月6日、肝硬変からの合併症で亡くなった。享年46歳。私たちは再び彼のような存在を目の当たりにしたり、楽曲を耳にすることはないだろう。

2017/06/14 掲載