Lady Saw(レディ・ソウ)Text by Dub Store Sound Inc.
90年代から現在までそのパワフルなディージェイ・スタイルと、ハードコアなリリックで特に女性ファンから圧倒的な人気を獲得しているダンスホールクィーン。
Lady Saw
本名 |
Marion Hall |
出生 |
1972年7月12日 |
出身地 |
ジャマイカ セント・マリー Galina |
関連アーティスト |
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デビュー以来最も安定した人気を誇る女性ディージェイ。ジャマイカを代表するトップ・パフォーマーであるシャバ・ランクス(Shabba Ranks)やブジュ・バントン(Buju Banton)と同レベルの存在感を持ち、エネルギッシュなステージングにも定評がある。スラックネスから、バラードまでを扱う話芸の巧みさも大きな魅力である。
尊敬をもって"Mama Saw"や"The First Lady Of Dancehall"と呼ばれ、ヴァイタミンC(Vitamin C)とのコラボレーション楽曲'Smile'でトリプル・プラチナムを獲得、海外のショーで始めてのヘッドラインを飾るなど輝かしいキャリアを積み上げてきた。そして2003年にはあのグウェン・ステファーニ(Gwen Stefani)のノー・ダウト(No Doubt)とのコラボ'Underneath It All'でジャマイカの女性ディージェイとして始めてグラミー賞最優秀パフォーマンス賞を受賞するという快挙も成し遂げている。
彼女は元々キングストンのThe Free Zoneで裁縫の仕事をして生計を立てていたが退職。音楽への道を志し、ディージェイとしてフル・タイムでの活動を開始する。15歳からレディ・ソウ(Lady Saw)と名乗っていたが、それはアウト・オブ・キー・シンガーのテナー・ソウ(Tenoe Saw)を真似ていたことに由来している。
彼女がシーンで頭角を表し始めたのは1990年代初期、銃を歌った楽曲や男性アーティストがシーンの主軸を担っていたが、彼女は女性としてスラックネスをテーマに歌った。ルード・ギャルを支持する楽曲や女性目線による性的な描写は評判を呼び人気を獲得し始める。
レーベル、ダイヤモンド(Diamond)からの'If Him Lef'、'Stab Out De Meat'といったシングル・ヒットも輩出したレディ・ソウだが、彼女の特徴はそのステージ・パフォーマンスでより大きく発揮された。ショーの最中に観客の男性をステージに上げ、セックスを連想させるパフォーマンスを演じ更なる脚光を浴びる。しかしその過激とも取れるスタイルから、評価は賛否が分かれる物であり、リスナーの反応は様々だった。また多数の際どい表現を扱うリリックからもイベント出演を拒まれることがあった。
その後は女性の堕落、"セーフ・セックス"を歌い、ショッキング・ヴァイブス(Shocking Vibes)からの'No Long Talking'、マッド・ハウス(Mad House)からの'Sycamore Tree'、ダイヤモンド・ラッシュ(Diamond Rush)からの'Find A Good Man'といった楽曲を発表。これらのリリースもヒットを記録し、更なる地位を確立していった。これらの楽曲はニューヨークやマイアミでも頻繁に放送された。
こうした国内外での活躍が認められ、VPレコーズ(VP Records)と契約を果たすとここから多数の作品を発表していく。1994年、デビュー・アルバム「Lover Girl」のリリースに始まり、1996年には「Give Me A Reason」、1997年の「Passion」、1998年の「Raw: The Best Of Lady Saw」、「99 Ways」、2004年の「Strip Tease」、2007年の「Walk Out」、2009年の「Extra Raw: The Best Of Lady Saw」と現在までに8作のアルバムを発表した。2004年にはシングル'I've Got Your Man'がビルボード・チャートで85位を記録している。
またこれまで数多くのダンスホール界のスターと共演を果たし、ビーニ・マン(Beenie Man)との'Healin'、ショーン・ポール(Sean Paul)との'Bossman'、セシル(Cecil)との'Loser'、ターニャ・スティーヴンス(Tanya Stephens)との'Bruck Dem Up'といったコラボレーション作品をリリースしている。先にも触れたが、様々なジャンルのアーティストとの共演も多く、これまでにグウェン・ステファーニ、ミッシー・エリオット(Missy Elliott)、フォクシー・ブラウン(Foxy Brown)、イヴ(Eve)、リル・キム(Lil' Kim)といったアーティストにフィーチャーされている。
自身のプロダクション、ホール・プロダクション(Hall Production)の運営にも熱心で、これまでにケイプルトン(Capleton)、スプラガ・ベンツ(Spragga Benz)、シズラ(Sizzla)、バウンティ・キラー(Bounty Killer)、ビーニ・マン等を起用した"Blindfold"と"Lock Jaw"リズムをリリースしている。
プライベートでは男の子2人と女の子1人の養子をもうけ、ヴェテランと呼ばれる域に達した現在も順調に作品が届けられている。
2009/08/18 掲載 (2013/11/28 更新)