Jimmy Cliff（ジミー・クリフ ）Text by Dub Store Sound Inc.
レゲエ界で常に成功してきたアーティストの一人であり、彼のキャリアは早期のスカの時代から現在までおよび、その中には彼が出演した映画「The Harder They Come」も含まれる...この映画は世界中のオーディエンスにレゲエを知らしめるきっかけを作った映画だ。
Jimmy Cliff
| 本名 | James Chambers |
| 出生 | 1948年4月1日 |
| 出身地 | ジャマイカ セント・キャサリン |
| 関連アーティスト |
ジミー・クリフが先入観というものを否定しないのはレゲエ界の偉大なるシンガー、作詞家の一人として正当な評価をずっと得ていなかったからかも知れない。キャリア全体を通し、彼は常に壁を壊し続けているが、音楽の様々な道を探検するという彼の主張が当時の評論家や大衆を混乱させた。
1948年にセント・キャサリンの田舎の教区でジェームス・チェンバーズ(James Chambers)として生まれた彼は1962年、引っ越した先の都会で学校には行かずキングストンで始まろうとしていた音楽産業に誘惑されてしまった。同年、彼は2人のサウンド・システムの技手、カウント・ボイジー(Count Boysie)の下で'Daisy Got Me Crazy'を、サー・キャバリアー(Sir Cavalier)の下で'I'm Sorry'を初めて録音したが、これらはのちに売り物としてよりも参照となるレコード盤して人気を集めた。次に彼はオレンジ・ストリートの134A番地でコングズ・ビヴァリーズ・レコード・ショップ(Kong's Beverly's Record Shop)と コングズ・アイス・クリーム・パーラー(Kong's Ice Cream Parlour)を経営するレスリー・コング(Leslie Kong)の下で'Dearest Beverley'を録音。レスリー・コングはジミーの華麗なパフォーマンスに心を奪われ、すぐさま彼をスタジオに連れて行き'Dearest Beverley'と'Hurricane Hattie'を録音し、ジミー・クリフと改名させジャマイカのビヴァリーズ(Beverleys)、イギリスのアイランド(Island)から続けざまにリリースした。そのレコードはレスリー・コング最初のリリースの一つで、コングはのちのキャリアをレコード・プロデューサーとして、ジャマイカ音楽の発展の重要な役割を担うことになるのであった。
'Hurricane Hattie'はジャマイカで大ヒットを記録し、ジミーはビヴァリーズで'King Of Kings'や'One Eyed Jacks'など数々のスカ・ナンバーをヒットさせ、そこでの録音は彼をすぐにジャマイカの主要ヴォーカリストの一人に定着させた。キングストンのソンブレロ・クラブ(Sombrero Club)で撮影された現在入手可能な短編プロモーション映画「This Is Ska」で信じられないほど若いジミーはプリンス・バスター(Prince Buster)、チャーマーズ(Charmers)、ストレンジャー・コール(Stranger Cole)、メイタルズ(Maytals)などと並び実にダイナミックなパフォーマンスを披露している。
クリス・ブラックウェル(Chris Blackwell)の要望でジミーはロンドンに移住し、アイランド・レコーズは彼をイギリスの"プログレッシブ"というジャンルのためにソロ・スターにし彼を養育した。何年もの間ロンドンに住んでいたジミーはよく知られ皆に愛される存在になり、ほかのアーティストたちがそうだったように、P.P. アーノルド(P.P. Arnold)、マデリン・ベル(Madelaine Bell)、モット・ザ・フープル (Mott The Hoople)のイアン・ハンター(Ian Hunter)などと仕事を共にした。しかし、アイランドの有名なサンプル・アルバムにアンダーグランドで人気が高かった、ザ・インクレディブル・ストリングス・バンド(The Incredible Strings Band)、ジェスロ・タル(Jethro Tull)と並んで参加したものの、彼の音楽に共感する"クロスオーバー"のリスナーを見つけることに失敗した。
1968年に彼はブラジルを訪れた際にジャマイカを代表としてInternational Song Festivalに出演し、彼のエントリー曲'Waterfall'はイギリスでは販売されなかったものの、南アメリカに彼の熱心な支持者を増やした。ブラジルでの滞在は彼に自分のキャリアを回顧する機会と新しい曲を書く機会を与えた。その後ジャマイカに戻った彼と仕事を共にしたレスリー・コングはジミーが世界中を巡り、挑戦し、見つけてきた"世界的な成功"をジミーのプロデューサーだったため、ただ自宅にいただけで得てしまったのだ!
1969年の冬彼らの'Wonderful World Beautiful People'はUK国内チャート6位という目も眩む高さまで急上昇しそしてジミーはついに今まで恵まれなかった'クロスオーバー'の成功に恵まれ始めた。レゲエの楽曲であり、非常に商業目的だったにも関わらず目標を達成したのだ!ジミーの翌年のヒット曲'Vietnam'はボブ・ディラン(Bob Dylan)にも劣らない影響力持ち、ディランは"今までに聞いたことの無い最高の反戦歌"と述べている。ジミーの次のヒット曲はキャット・スティーブンス(Cat Stevens)の'Wide World'のカバーで1971年の秋にUKチャート8位に到達した。
3つのアルバム「Jimmy Cliff」、「Hard Road To Travel」そして特に「Another Cycle」は高評価だったが、評論家や大衆は彼の音楽をどのジャンルに分別してよいのかますます困ってしまった。1972年に彼は映画業界に飛び込み、ペリー・ヘンゼル(Perry Henzell)の「The Harder They Come」でルード・ボーイのスター歌手としての役を得た。この映画は他のどんな要因よりほぼ間違いなく、長きに渡るジャマイカ音楽の世界的な成功を確かなものにするきっかけを与えた。映画のあらすじは、10年前の自身の苦難と照らし合わせるかのようで、若きジミー・クリフはアイバンホー・マーチン(Ivanhoe Martin)に扮し、歌手として富と名声を得るため田舎からキングストンに上京してくる。ジミーはゆくゆくは成功を収めるのだがアイバンは全ての行程で成功を妨げられ、彼は得た全てのものを取り上げられてしまう。アイバンは権力からの逃亡者になり、自由のために最後の逃亡を企て、現実と幻想との境目が交わる魅力的なシーンで映画は幕を閉じる。映画は世界的に大ヒットをし、映画に伴ったサウンド・トラックは歴代のレゲエの名曲とジミー・クリフの楽曲を多数含み、レゲエのレコードの中で最も売れ、いつの時代も聴かれるアルバムの一つである。
その後の30年以上ジミーはコロンビア(Columbia)、EMI、アイランド、レプライズ(Reprise)、サイアー (Sire)、ワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)など海外の一流企業と仕事を頻繁にし、彼の録音は世界中のファンたちに売れ続けた。また彼はアフリカと南アメリカで非常に人気があるのだ。いつも彼はほかのレゲエ界のスター以上に見えるのだが、サン・パワー(Sun Power)とワンネス(Oneness)からリリースしたセルフ・プロデュース作品を通してジャマイカでの自分の立ち位置を保ち続けている。その中でもジョー・ヒッグス(Joe Higgs)と競演した'Son Of Garvey'や'Rub A Dub Partner'は大ヒットしダンス・ホール・スタイルでの彼の技量を証明した。
ジミー・クリフは真のオリジナルだがよく誤解をされてしまうのはどんな音楽の構成やジャンルの明確なガイドラインにも縛りつけられていないからだ。彼に見合った明らかな業績はレゲエ業界内外を問わずごく僅かだが栄光のキャリアは驚くべき50年目に突入した今も衰えをみせない。
2010/07/01 掲載 （2013/12/11 更新）
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