Aswad(アスワド)Text by Dub Store Sound Inc.
1970年代から80年代にかけて、イギリスのルーツ・バンドの第一人者として活躍した。UKのポップ・チャートに楽曲を送り込む快挙も成し遂げている。
Aswad
メンバー |
Brinsley 'Dan' Forde George Oban Tony 'Gad' Robinson Angus Gaye |
活動期間 |
1975年 ~ |
結成地 |
イギリス ロンドン |
1975年、イギリスのウェスト・ロンドンにて結成されたレゲエ・グループ、アスワド(Aswad)。70年代から80年代にかけてイギリスのルーツ・グループの代表格であり、イギリスのポップ・チャートに楽曲を送り込むという快挙も成し遂げた。グループ名であるアスワドはアラビア語で"Black"を意味し、彼等はラスタファリズムと社会問題をロンドンという背景の元でフュージョンさせた。
ヴォーカル、ギターのブリンスリー'ダン'フォード(Brinsley 'Dan' Forde)、ベースのジョージ・オバーン(George Oban)、ヴォーカル、キーボードのトニー'ガッド'ロビンソン(Tony 'Gad' Robinson)、ドラムのアンガス・ゲイ(Angus Gaye)が中心となって結成され、独立したバンド形態をとった。
彼等はデビュー・アルバムとなったマンゴ(Mango)からの「Aswad」でいきなり高評価を得た。この作品でロンドンに暮らすジャマイカ移民たちの窮地を物語り、彼等にとっての大きな救いとなった。その後も人種的、社会的な視点でのアプローチは続き、1978年にリリースされた「Hulet」ではよりルーツ色の濃い、黒いサウンドを打ち出した。そのメッセージの内容と共に彼等の巧妙で緻密な楽曲構成や、楽器の使い方も多くのリスナーを惹き付ける要素となった。
1980年代に入ると、トロンボーン奏者のヴィンセント・ゴードン(Vincent Gordon)、アルト・サックスのマイケル'バミー'ローズ(Michael 'Bammi' Rose)、トランペットのエディ'タン・タン'ソーントン(Eddie 'Tan Tan' Thornton)が様々な形でバンドに参加し、彼等のサウンドはより大きなスケールへと発展していった。この年ジョージ・オバーンがバンドを離れると、トニー'ガッド'ロビンソンがベースも担当する様になった。
このホーン・セクションの効果は1980年に発表された12インチ・シングル、'Warrior Charge'ではっきりと聴くことが出来る。この楽曲はイギリスのレゲエ・シーンを描いた映画、「Babylon」に使用され、彼等のキャリアを代表する楽曲となった。またブリンスリー'ダン'フォードは映画に出演し、俳優としても脚光を浴びたのである。
この頃に彼等の人気は絶頂を迎え、80年代のイギリスのルーツ・シーンは彼等を中心に回って行くことになる。また彼等は自身の作品を制作する傍ら、超一流のセッション・バンドとしても高い名声を手にした。彼等はジョニー・オズボーン(Johnny Osbourne)やマイケル・パーマー(Michael Palmer)、デニス・ブラウン(Dennis Brown)といったジャマイカからの一流歌手の為に最高にタフなリズムを演奏している。
1981年にはレーベルをCBSに移し2枚のアルバム、「A New Chapter」と「Not Satisfaction」(1982年)をリリース。その後またマンゴ/アイランド(Mango/Island)に戻り、1982年のNotting Hill Carnivalへと出演。ここで行われたライブの模様が「Live And Direct」としてリリースされた。更に1984年の作品である'Chasing The Breeze'やメイタルズ(Maytals)のカバーである'54-46 Was My Number'はUKチャートを賑わせるヒットとなった。
その後はUKルーツ・シーンの重鎮であるジャー・シャカ(Jah Shaka)のプロデュースで「Meets Aswad In Addis Ababa Studio」をリリース。今日まで高く評価され続ける名作となった。この頃から彼等はライブ活動にも重点を置き、ソウル、ファンクを取り入れた独自のスタイルでイギリスを代表するスターとしての地位を不動の物とした。
1980年代も後半を迎えると、チャートで1位を記録した'Don't Turn Around'や'On And ON'といった楽曲によってポップ音楽のフィールドでも活動を見せた。こうした楽曲に対するファンの評価は様々だが、こうした活動一辺倒ではなく、1990年に発表した'Too Wicked'ではジャマイカのミュージック・ワークス(Music Works)スタジオを使用し、原点に立ち帰る様な作品も発表している。このアルバムではシャバ・ランクス(Shabba Ranks)との共演も果たし、クロスオーバーな成功を手にした。アスワドはここ日本でも多くのファンを掴み、作品は素晴らしい売り上げ枚数を記録している。
2019/03/29 掲載