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Peter Tosh（ピーター・トッシュ）Text by Jeremy Collingwood

ウェイラーズ、オリジナル・メンバー3人の1人。断固としてインディペンデントであり続けた彼が望むスーパースターの座を手に入れることはなかったが、自己を表現するキャリアを特にアメリカ、フランス、アフリカで確立した。彼の背景には聖書が存在し、多くの代表曲にピーターならではとも言える旧約聖書からの引用が見受けられる。

Peter Tosh

本名	Hubert Peter McIntosh
出生	1944年10月19日
死没	1987年9月11日
出身地	ジャマイカ　ウエストモアランド
関連アーティスト	Bob Marley Bunny Wailer Rita Marley Andrew Tosh Joe Higgs Rolling Stones Wailers

ピーターは1944年ウエストモア・ランドでハバート・ピーター・マッキントッシュ(Hubert Peter McIntosh)として生まれた。彼はキングストンのトレンチタウンで若きボブ・マーリー(Bob Marley)、ネヴィル'バニー'ウェイラー(Bunny Wailer)と出会い、彼らはすでにキャリアを確立していたジョー・ヒッグス(Joe Higgs)に音楽、ならびにラスタやエチオピアの文化などについてほどきを受けた。ザ・ウェイラーズ(The Wailers)として彼らが1966年にスタジオ・ワン(Studio One)のコクソン・ドッド(CS Dodd)と契約を交わすとヴォーカル・トリオだったウェイラーズでピーターは低音域を担当し、アメリカのR&Bのカヴァー楽曲で「ドゥーワップ」スタイルのバック・コーラスをしばし披露した。

彼はスタジオ・ワンで多くのリード・ヴォーカルを担当することはなかったがキングストン空港に来訪した皇帝ハイレ・セラシエ一世について歌った'Rasta Shook Them Up'はその輝きを放つ。(その1966年、皮肉にもボブ・マーリーはアメリカの車工場で働いていた。)また、同時期に彼の存在を決定付け、キングストンのゲットーでのラフでタフなストリートでの生活を映し出した楽曲'Toughest'を発表した。

ボブ・マーリー&ザ・ウェイリング・ウェイラーズ(Bob Marley and The Wailing Wailers)のレーベルWail N Soul Mではピーターがリード・ヴォーカルを務めた希少なシングル4枚'Fire Fire'、'Funeral(別称 Burial)'、'Steppin' Razor'、'Them Hafe Get A Beaten'がリリースされ、メンバーとしても重要な役割を担うフロント・マンであり続けた。後にトッシュは(ジョー・ギブス(Joel Gibson)が制作した)'Steppin' Razor'、そしてジョー・ギブスのもとで'Them Hafe Get A Beaten'の別テイクを自主制作した。

彼らはジョニー・ナッシュ(Johnny Nash)とダニー・シムズ(Danny Sims)のレーベルであるJADと契約を交わし、キングストンを拠点に持ったリー・ペリー(Lee Perry)、レスリー・コング(Leslie Kong)、クライブ・チン(Clive Chin)、バニー・リー(Bunny Lee)といったプロデューサーと録音を続けた。グループはボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズへと変名を行なうもピーターはグループの重要人物であり続けた。この時期にピーターは'Go Tell It To The Mountain'、''Stop the Train'、'Second Hand'、'Can't You See'といった楽曲でリードを務めたが、その一方で彼に与えられた役割の多くはハーモニーだった。しかし一度リードを担えば、聖書から影響を受けた力強い歌でトッシュは人々の行いを非難し多少なりとも論争を巻き起こすようになっていた。

ピーターはみずからキングトンのプロデューサーたちを訪ねた結果、ジョー・ギブスのために単発で録音を行なったり、バニー・リーのもとではインストゥルメンタル楽曲のセッションでピアノを演奏した。また、リー・ペリーが制作したUロイ(U Roy)の有名曲'Rightful Ruler'にゲストとして参加し、エチオピアの古代語アムハラ語でチャントしている。これは希少盤'Black Dignity'でも同様に見受けられる。70年代初期、タフ・ゴング(Tuff Gong)からシングル盤がリリースされていた時期、ピーターは1人でリード・ヴォーカルを務めることを好まなかった。グループとして急進するなかラスタの信仰はこの時点で彼の決定的な要素となっていたのだ。さらに、アメリカのブラック・パワーへ関心を持つようになり、屈強な人物であるピーターに追い風となるように過激とも言える刺激を与えた。事実、彼は1960年代後期にブラック・パンサー党を象徴する拳型の木製ネックレスを作り売っていたほどだ。

この時期トッシュは素晴らしいスタイルでメロディカを演奏していて、バニー・ウェイラーの発表した'Amagideon'のリズムでピーターがメロディカを吹いた崇高な楽曲'Anti-Apartheid'がその一例に挙げられる。また、リー・ペリーの制作した'Sun Is Shining'のメロディカを担当。またU Royがディージェイを披露している'Trenchtown Rock'の素晴らしいダブでピーターは演奏を披露している。しかし、反アパルトヘイト抗議運動に参加した際に警察から暴行を受け、手に怪我を負ったことからメロディカ演奏者としてのキャリアがここでストップしてしまった。

1972年ジャドはクリス・ブラックウェル(Chris Blackwell)のアイランド・レコーズ(Island Records)へ彼らの契約を委託。これによってピーターはリード・ヴォーカリストとして新たな時期を迎えることになる。彼らのデビュー・アルバム「Catch A Fire」には'400 Years'と'Stop The Train'の新たなテイクが収録された。これに続いて発表されたアルバム「Burnin'」でボブと共にリード・ヴォーカルを務め作曲を手掛けたレゲエを代表する'Get Up, Stand Up'はピーターにとってこれまで最大のヒットになった。アイランドによってピーターはスポットライトを浴びることになったが、雨が多く寒いイギリスを小さなヴァンでツアーするのが好きにはなれなかった...誰が好きになれるだろうか?8年間、パフォーマンスを共にしてきたピーターはソロ活動を決意、レーベル、インテル・ディプロ(Intel Diplo)を設立した。

すぐに彼はアメリカのCBS、イギリスのヴァージン(Virgin)と契約を交わし、1976年に(ボブ・マーリーの参加していない)ウェイラーズの重要アルバム「Legalize It」を発表。アルバム・タイトルの楽曲'Legalize It'はリリース当初からスモーカーズ・アンセムとなり、マリファナ畑の写真が使われた見開きのジャケットスリーブというヴァージンの戦略は成功を収めた。2作目となった「Equal Rights」では認知度を増やし、1978年にローリング・ストーン(Rolling Stones)と契約し「Mystic Man」を発表すると好調な売り上げを記録、ミック・ジャガーとのチャッチーな'Walk and Don't Look back'が収録された。完全なるクロスオーバーでの成功もすぐそこのように見受けられたが、その後発表された5つのアルバムで聴かれた音楽はすべてとは言わないがレゲエとロックというジャンルの狭間でその勢いは衰えていった。それでも彼の過激さ、天性の不屈さによってアフリカや世界中でその人気が今も絶えることはない。彼にとって最高の功績となったのは最期のアルバム「No Nuclear War」が最初のレゲエ部門が始まったグラミーにおいて賞を受賞したことである。

しかし彼はジャマイカの自宅で強盗に襲われ死亡、最期には血が流れた。彼は殺害者を知っていたとも噂されている。アップタウンからダウンタウンのゲットー出身の人々との交流があり、それを誇りに思っていた。

ピーターの遺産はその瞬間の精神を捉えた素晴らしいシングル楽曲やアルバムである。彼はクロスオーバーのシーンでも断固としてインディペンデントであり続けたが、それこそ人々が彼を愛し続ける理由である。

2017/08/23 掲載