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トップ特集・オリジナルコンテンツアーティスト名鑑Lynn Taitt
アーティスト特集
Lynn Taitt(リン・テイト)Text by Harry Hawks
1966年から68年の間、リン・テイト・アンド・ザ・ジェッツが制作した美しいロックステディは次に来る者たちに基礎もたらした...
Lynn Taitt
本名 Nearlin Taitt
出生 1934年6月22日
死没 2010年1月20日
出身地 トリニダード・トバゴ サン・フェルナンド 
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多くの文化・人種がジャマイカで混ざり合い一つのまとまり「Out Of Many One People(多くの部族から一つの国民)*ジャマイカの標語」を作り上げた。音楽形式やミュージシャンの多くがジャマイカ国外に原点を持ち、そういった要素が豊かなジャマイカの音楽史で様々な角度から影響とつなぎあわされた。トリニダッド人のリン・テイト(Lynn Taitt)は最も重要な人物の1人である。

「俺が最初にリリースした一連の楽曲はリン・テイトとともにやったんだ...スカからロックステディへと全てのビートを変たこの偉大な男はトリニダッド出身だった。だがバイロン・リー(Byron Lee)は彼をオルガン演奏者としてジャマイカにつれてきたんだ。でも彼はギターを弾き始めて、そこから全てのストーリーは始まったんだ!」バニー'ストライカー'リー(Bunny Striker Lee)

「ロックステディはスカからの素晴らしい変化だった...リン・テント...ジャマイカ音楽をスカからロックステディへと変えた男だ」デリック・モーガン(Derrick Morgan)

1934年6月22日にトリニダッドのサン・フェルナンドで生まれたニアリン'リン'テイト(Nearlin 'Lynn' Taitt)は自身の音楽のキャリアをスチール・パンの演奏者として「8歳か9歳の時に」始めた。15歳で彼はギターを習得しザ・ダッチー・ブラザーズ(The Dutchy Brothers)というバンドで演奏、その2年後自身のグループを組織にするために彼はザ・ダッチー・ブラザーズを脱退した。1962年にグループはバイロン・リーから独立記念祝典に参加するためジャマイカに来るようにいい渡された。リンはキングストンに残ることを決めザ・シークス(The Sheiks)に参加、そしてリン・テイト・アンド・ザ・コメッツ(Lynn Taitt and the Comets)を組織したがライブとレコード制作を始める前はザ・キャバリアーズ(The Cavaliers)に参加した。リンの最初のヒット・レコードはババ・ブルックス(Baba Brooks)と彼のバンドとともにキング・エドワーズ(King Edwards)のために録音した'Shank I Sheck'だった。

1966年にフェデラル・レコーズ(Federal Records)と契約した彼はリン・テイト・アンド・ザ・ジェッツ(Lynn Taitt and the Jets)を結成し最初のロックステディ曲と考えられているホープトン・ルイス(Hopeton Lewis)の'Take It Easy'を制作した。

「ホープトン・ルイスはフェデラル・レコーディング・スタジオに'Take It Easy'という曲とともに現れ、私にはスカが早すぎると感じていた。とても早いと。だからこの曲はゆっくりやろうと彼らに伝えた。とてもゆっくりにだ。音楽がゆっくりになるとスペースが生まれた。音楽がゆっくりになればなるほど、何か出来るスペースがさらに生まれる。だから私はベース・ラインを置きベースとともに演奏し、私はベース・ラインを演奏することが可能になったんだ。また時々ピアノをかき鳴らしたり、ベースとともにベース・ラインを演奏した。あれが最初のスロー・テンポの曲だった...その当時はゆっくりな楽曲は無かった。全てはスカだったな」リン・テイト

事実ロックステディは2年しか続かなかったもののリン・テイトの演奏、アレンジメント、ロックステディのリズムがジャマイカ音楽のサウンドに及ぼした影響は計り知れない。リン・テイト・アンド・ザ・ジェッツとクレジットされたレコードは決して多くは無かったものの1966年から68年の間最も需要が多かったセッション・プレイヤーであり、彼らが演奏したレコードは数百枚にも及ぶ。

「彼らは私に電話をよこし、セッションは朝の9時から昼の12時まで続き、また違うセッションが1時から始まって4時に終わる。その後には5時からセッションが始まり夜の8時まで続いたものさ...1日に4、5回違うプロモーターたちのためにセッションをしたかな」リン・テイト

ロックステディにおいてベースは全てのビートを対等に強調しなくなったが、その代わりにリズムを分け、繰り返すパターンで演奏された。それからリズムの焦点はドラムとベースに置かれるようになった。スカの中心だったホーン楽器は影を潜めアメリカのソウル・シンガーたちに影響を受けたヴォーカリストたちは本領を発揮し始めた。この功績はザ・ジェッツのアレンジを担当していたピアノ奏者であるグラッドストーン'グラディ'アンダーソン (Gladstone Anderson)に与えられている。グラディはこの新しい音楽を'Take It Easy'の最終テイクを録り終えた後にリズムの特徴から"ロックステディ"と名づけた。周知にはあまり知られてはいないが彼はリンの通訳としての役割も担った。

「私にはトリニダッド特有の強いアクセントがあった...ジャマイカ人は理解が出来なかったものだからグラディは私の世話を全部請け負ってくれた。シンガーたちと話し合い、全てを明確にしてくれた」リン・テイト

ロックステディ本来の美しさと控えめな上品さは他に比べようも無く40年以上も渡り不動の位置をジャマイカ音楽の中に保ち続けている。継続的なレゲエ発展の場面ごとにリズム、ベース・ライン、音楽のモチーフ、歌詞のテーマ、メロディーと歌に頼ってきたようにこの音楽の永続的な魅力は次に来る全ての者たちの中軸であることを証明した。歌詞はますます重要さを増し、この音楽の自然な性質はヴォーカリストたちに伝統的な恋と愛情だけでなく彼らの不平不満を表現するスペースを与えた。

ボビー・エイトキン・アンド・ザ・カリブ・ビーツ(Bobby Aitken and the Carib Beats)、時折リン・テイトをフィーチャーしたトレジャー・アイル(Treasure Isle)を所有するデューク・リード(Duke Reid)の専属バンド、トミー・マクック・アンド・ザ・スーパーソニックス(Tommy McCook and the Supersonics)、そしてスタジオ・ワン(Studio One)を運営するコクソン・ドッド(CS Dodd)のザ・ソウル・ブラザーズ(Soul Brothers)とリン・テイトの名前はクレジットされていないが彼を起用したソウル・ヴェンダーズ(Soul Vendors)などのロックステディ・バンドがあったがジャマイカ音楽史ではリン・テイト・アンド・ザ・ジェッツの業績に見合った評価はされていない。しかしリンはいつも控えめで、謙虚な人物だった。

「そこに行きアイデアが浮かぶということに喜びを感じ、そのアイデアをレコードに採用し、それが公の場に出て行くということは最高の贈り物だったよ。その頃はビジネスの側面を考えていなかった。私たちはただ美しい音楽を造るっていうことに興味があっただけだよ。私はただのギター奏者でカリブ海の黒人音楽の伝統を保っていきたかっただけさ」リン・テイト

1968年、約2年間におよぶ前代未聞の音楽制作のあと、リンはカナダのトロントにあるウェスト・インディアン・フェデレイテッド・クラブ(West Indies Federated Club)のハウス・バンドの音楽アレンジャーとしてのオファーを受けた。彼は「チャンスに飛び乗り」、ジャマイカを離れそれ以来戻ってくることは無かった。

"これがソウル・フードのレシピだ(A recipe for soul food)
いくらかの魂をくれ、ベイシー (Give me some soul Bassie) (Bryan Atkinson)
それにめいっぱいのドラムだ(A skinlfil of drums) (Joe Issacs)
グラディ、ピアノを鳴らしてくれ (A tickle of ivory Gladdy) (Gladstone Anderson)
ハックス、スカを少々加えてくれ(A dash of ska Hux) (Hux Brown)
そしてリン・テイトのストリングを少し...(A strings of Lyn Taitt)" ―Soul Food – Lyn Taitt and the Jets

そしてリン・テイトは2010年1月20日、カナダのトロントで帰らぬ人となった。

参考文献:
"Robert Schoenfeld: Interview with Lyn Taitt"
"Dub Catcher Volume 1 Issue 4 June 1992"

2016/11/22 掲載
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