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アーティスト特集

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John Holt（ジョン・ホルト）Text by Harry Hawks

ジョン・ホルトはジャマイカの"愛のバラードを最も上手く表現できる歌手"として十分に崇敬されているが、それと同様にパラゴンズとしてもっとも素晴らしいロックステディのシンガーの1人、スタジオ・ワンの基礎を築いたヴォーカリスト、もしくはチャンネル・ワン、またヘンリー'ジュンジョ'ロウズからのリリースを通して1970年と80年代に最も輝いたルーツ・シンガーとしてみなされている。

John Holt

本名	John Holt
出生	1947年7月11日
死没	2014年10月19日
出身地	ジャマイカ　キングストン
関連アーティスト	Paragons Tyrone Evans Dennis Brown

1947年7月11日、キングストンで生まれたジョン・ホルト(John Holt)にとって初めてのブレイクはヴェレ・ジョンズ・ジュニア(Vere Johns Junior's )の"オポテュニティー・アワー(Opportunity Hour)"タレント・ショーで、1963年にビヴァリーズ(Beverleys)のレスリー・コング(Leslie Kong)のために録音した'I Cried A Tear/ Forever I'll Stay'が彼のデビュー・シングルだった。そして他のジャマイカ人シンガーと同じように、彼の時代はその3年後、ロックステディの到来と共にやってきた。

1966年、ボブ・アンディ(Bob Andy)の脱退後、パラゴンズ(Paragons)はハワード・バレット(Howard Barrett)、ガース'タイロン'エヴァンス(Garth Tyrone Evans)そしてジョン・ホルトからなっていた。デューク・リード(Duke Reid)のレーベル、トレジャー・アイル(Treasure Isle)のために活動し、トミー・マクック(Tommy McCook)と彼のスーパーソニックス(Supersonics)をバック・バンドに付けた彼らのレコードはクールなサウンドのロックステディと称され、ジョンの自身の満ちたリード・ヴォーカルの後ろでハワードとタイロンのハーモニーはのびのびと舞った。'Village Girl/Wear You To The Ball'、'On The Beach'、'Only A Smile'、'Happy Go Lucky Girl'、'Tide Is High'などを含む非の打ち所のないパラゴンズの楽曲はその時代を支配した。ロックステディがレゲエに移行したときジョンはパラゴンズ、またはしばしばソロ・アーティストとしてデューク・リードの好敵手であったクレメント'コクソン'ドッド(CS Dodd)との録音を始めた。'Tonight'、'Ali Baba'、'I'm Your Man'、'I See Your Smile'などのヒット曲がトレジャー・アイルから続いた一方でスタジオ・ワン(Studio One)からも'My Satisfaction'、'Fancy Make Up'、'Sad News'、'A Love I Can Feel'、'OK Fred'などをヒットさせた。

これら多くの曲は結果的にその時代の音楽のスタイルがどう変化しようとも何度も何度も繰り返しヴァージョン化されるレゲエの名曲となった。またジャマイカ音楽好きなら偉大なるUロイ(U Roy)のことを忘れることはないだろう...彼は70年代初期にパラゴンズがトレジャー・アイルに残した美しい曲を使い新たなレベルの興奮を作り上げた。'Sad News'は1975年にジョニー・クラーク(Johnny Clarke)が'Move Out Of Babylon'へと変身させ、1979年にエロール・ダンクリー(Errol Dunkley)がカヴァーした'OK Fred'はイギリスの国内チャートにランクインするヒット曲となった。70年代、「ドレッドロックス、ボールドヘッド(*ドレッドロックスではない人、体制肯定者の意)、バーバー(髪を切る者の意)」という表現が無数に存在した中で、'Ali Baba'はレゲエ史においてとても不思議な歌詞を持つ楽曲の一つとして大きな注目を集めた。2001年から2002年にかけての冬、'My Satisfaction'と'My Best Girl'のヴァージョンは今一度ダンスホールに響き渡った。'Tide Is High'はブロンディ(Blondie)により1980年にカヴァーされ、また2002年にはアトミック・キティン(Atomic Kitten)がカヴァーし国際的ヒットとなった。そしてこのリストは続いていく...

1971年ジョン・ホルトはプリンス・バスター(Prince Buster)、キース・ハドソン(Keith Hudson)、フィル・プラット(Phill Pratt)たちのために録音をし、そして最も成功を収めたバニー'ストライカー'リー(Bunny Striker Lee)との'Stick By Me'はジャマイカ音楽史において最も人気のレコードの1つだ。

「俺にはジョン・ホルトと共に作った最も長い間ジャマイカでナンバーワンを記録した曲がある。そのときジャマイカで最も有名な曲だった...」バニー'ストライカー'リー

1973年にハリー・ムーディー(Harry Mudie)によりリリースされたアルバム「Time Is Master」は、豊富なストリングス・アレンジがジョン・ホルトのセンチメンタルなラブソングを包み込み、トロージャン・レコーズ(Trojan Records)からリリースされ非常に大きな成功を収めたLPシリーズ「Volts Of Volts(1000 Volts Of Volts, 2000 Volts Of Volts, 3000 Volts Of Volts)」の基盤となった。ジョンは"主婦たちお気に入り"の歌手となりクリス・クリストファーソン(Kris Kristfferson)の'Help Me Make It Through The Night'のカヴァーは1974/1975年にヨーロッパで大きなクロスオーバー・ヒットとなった。しかしそのとき"楽な選択肢"を選ぶが出来ていなかったジョン・ホルトはマックス・フィールド・アベニューを通りチャンネル・ワン(Channel One)スタジオに向かい、当時のロッカーズ・スタイルでのリリースとなったリトル・ロイ(Little Roy)の'Tribal War'のカヴァーや自らの楽曲'Hooligan/Change Your Style'のタイトル名を変えた'Don't Fight Your Brother'はジャマイカで大ヒットとなった。

ヘンリー'ジュンジョ'ロウズ(Henry ‘Junjo’ Lawes)のヴォルケーノ(Volcano)サウンド・システムとレコード・レーベルは80年代のダンス・ホールとチャートをコントロールしジョン・ホルトはジュンジョのレーベル、ヴォルケーノからリリースし権威主義を否定した'Police In Helicopter'と'A Love I Can Feel'の再演で最前線に戻ってきた。新たな世紀が始まった2000年にはフレディ・マクレガー(Freddie McGregor)とケン・ブース(Ken Boothe)とともにロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ(Royal Philharmonic Orchestra)をバックにつけ、高名なロイヤル・アルバート・ホールで黒の蝶ネクタイ着用が義務だったコンサートのチケットを売り切った。彼のヒット曲のカタログは敵無しで彼のリヴァイバル・コンサートでのパフォーマンスは非常に満足できるのだが、時折苛立ちを覚える。オーディエンスたちは声を張り上げ彼らのお気に入りの曲をリクエストし、ジョンはそれに好意を持って返すのだが、彼はその数え切れない名曲たちを最期まで通さずに断片しか歌わないからだ。

熟練された職人であるジョン・ホルトが持つ大衆の聴きたい音楽を作る的確な才能は無類であり、彼は自身のキャリアのどの段階においても勝利を収めてきた。ロックステディの名曲、スタジオ・ワンのクラシック、クロスオーバーのバラード、ラブソング、生々しいルーツ・レゲエのいずれかがレゲエ・ミュージック発展の先端に立つ人物としての彼を作り上げたのだろう。彼は全てやってきたのだ。彼のもっとも優れた曲の多くは彼自身のヒット曲だけでなく数え切れないほかのアーティストたちがカヴァーしジャマイカ音楽史を通して高くそびえ立ってきた人物としての彼を思い出させる役目を果たしている。

2014/10/21 掲載　（2014/10/21 更新）