Star Trail(スター・トレイル)Text by Dub Store Sound Inc.
リチャード・ベル(Richard Bell)によって設立されたレーベル。カルチュラルなテーマを掲げた素晴らしいアーティストを数多くプロデュースし、アンソニー・B(Anthony B)やシズラ(Sizzla)をトップ・ランクのパフォーマーへと成長させた。
Star Trail
設立 |
1989年 |
設立地 |
アメリカ合衆国 マイアミ |
主要スタジオ |
Black Scorpio Cell Block Mixing Lab |
設立者 |
Richard Bell |
プロデューサー |
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エンジニア |
Bulby Fatta Jason |
関連アーティスト |
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90年代を代表するコンシャス・レーベル。熱心なボボ・ドレッド信奉者であるリチャード・ベル(Richard Bell)によって設立され、カルチュラルなテーマを掲げたアーティストを数多くプロデュースし、シーンへと送り込んだ。緻密に作りこんだリズムを使い、70年代を彷彿させるルーツ&カルチャーを全面に押し出したそのスタイルで現代のジャマイカにおけるコンシャスなステージの基盤を作った重要なレーベルとして認知されている。
中でも若かりし頃の2人のボボ・チャンター、アンソニー・B(Anthony B)とシズラ(Sizzla)の本レーベルからの作品群は今尚高く評価されている。その攻撃的なリリックと荒々しさでメインステージへと登場したアンソニー・B(Anthony B)は強烈にシーンの話題をさらった。'Fire Pon Rome'、'One Thing'、'Bun Down Saddom'、'Mr. Heartless'等の好戦的なカルチャー・ミュージックによって、トップ・アーティストとしての鮮烈なデビューを飾ったのである。中でも'Fire Pon Rome'はローマ法王を痛烈に批判するリリックが論争を呼び、放送禁止となる程であった。その後'More Fire'という歌詞がジャマイカで流行するのだが、そのまさに火付け役となったのが同曲であった。シズラSizzlaもスター・トレイル(Star Trail)に質の高い作品を残した。'Haunted & Nervous'、'Holding Firm'は重厚なリズムに乗せた力強いチャントは血がたぎる様に熱く、まだ荒削りなそのパフォーマンスも作品の魅力を更に高めている。
レーベル最大のヒットとして挙げられるのが、シルヴァートーンズ(Silvertones)のロックステディー、'Smile'のリメイク・リズムに乗せた一連の作品群であろう。ガーネット・シルク(Garnett Silk)の'Hello Mama Africa'は抜けるように伸びやかで、心地よく耳に残る。ブラック・ピープルとしてのアフリカ回帰のメッセージを美しいメロディー・ラインに乗せた素晴らしい作品だ。同曲はイギリスにおいてもナンバー・ワン・ヒットとなり、カリスマ的人気を誇るガーネット・シルク(Garnett Silk)の代表曲となった。彼は他にも'Jah Jah Is The Ruler'やアンソニー・B(Anthony B)とのコンビネーション、'Promise To Serve'という秀逸な作品を本レーベルに残した。
同様に'Smile'に乗せたべレス・ハモンド(Beres Hammond)、'Come Back Home'もクオリティーの高い作品である。人を愛する気持ちを歌ったストレートでソウルフルなナンバーで、リスナーの期待に見事に答えるパフォーマンスを見せている。
他にもエヴァートン・ブレンダー(Everton Blender)、'Lift Up Your Head'や'Create A Sound'、マイケル・ローズ(Michael Rose)、'Stalk Of Sensimilla'、トニー・レベル(Tony Rebel)、'Call Jah Name'等の素晴らしい作品を多数プロデュースしながらも、決して自身のスタイルを崩す事はなかった。トニー・レベル(Tony Rebel)のフレームス(Flames)と共に90年代におけるモダン・ルーツ・ミュージックを確立させた功績は計り知れない。
2008/11/21 掲載 (2008/11/21 更新)