Skengdon(スケンドン)Text by Dub Store Sound Inc.
80年代後半のダンスホール界において一際異彩を放つレア・レーベル。マイアミを拠点として独自の世界観を演出した。ベンツのエンブレムをモチーフにしたレーベル・ロゴからは堂々とした風格さえ感じられる。
Skengdon
設立地 |
アメリカ合衆国 フロリダ マイアミ |
主要スタジオ |
Skengdon Studio |
設立者 |
Kenneth Blac |
プロデューサー |
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エンジニア |
Bunny Tom Tom |
ケネス・ブラック(Kenneth Black)によって設立されたレーベル。マイアミを拠点に80年代のシーンにおいて独自の世界を展開し、一際異彩を放つレーベルである。同じくマイアミを拠点としたウィリー・リンドのへヴィー・ビート(Heavy Beat)、ブルックリンのドン・ワン(Don One)、リヴィング・ルーム(Living Room)等と共に80年代のアメリカのシーンを牽引した重要なレーベルとして位置付けられている。彼のレーベルからリリースされた一連の作品群はサウンド、アレンジ両側面から見ても非常に興味深い。当時の流行とは一線を画す独特なアプローチで革新的なサウンドを生み出した。リリース量は決して多いとは言えないが、凝縮された高いクオリティーを保った作品ばかりが目立つ。ミュージカル・ディレクターとしてあのジャッキー・ミットゥ(Jackie Mittoo)が参加している点も見逃せない。
スケンドン(Skengdon)のカタログの中でも特筆すべき秀逸な作品はスーパー・キャット(Super Cat)の'Mud Up'や'Sweet For My Sweet'、チャカデマス(Chaka Demus)の'young Gal Businessといったタイトルを抜きにして語る事は出来ない。これらのヒット曲は歴史的に見ても特に重要な作品であり、曲を支えたリズムはマイアミのスケンドン(Skengdon)スタジオにて録音され、ダンスホールの定番となった。このリズムのリメイクに乗せた多くのヒット・チューンも登場し、その後のシーンに対しても強い影響力を与えた。
レーベルの顔役としてスーパー・キャット(Super Cat)、ニコデマス(Nicodemus)の二人の存在は大きい。先に挙げたタイトルの他にスーパー・キャット(Super Cat)は'Permit Fi Gun'、'Pops'、'Vineyard Party'、'Wild Apache'といった代表曲を本レーベルからリリースしている。そのスーパー・キャット(Super Cat)と双璧をなしたニコデマス(Nicodemus)も、'Suzy Wong'、'Mr. Fabulous'といった素晴らしい作品によってその卓越したスキルを見せ付けている。スーパー・キャット(Super Cat)、ニコデマス(Nicodemus)共にキャリア絶頂期のパフォーマンスは本レーベルからの一連の作品で聴く事が出来る。
また明らかに70年代を彷彿とさせるルーツ・サウンドも展開しており、マイナー・コードで奏でるへヴィーなリズムに乗せたヤミ・ボロ(Yami Bolo)の'Free Mandela'は彼の長いキャリアの中でも最高傑作と呼べる強力な物だ。1986年という発表年にも大きな意味があり、高く評価される理由である。楽曲自体のクオリティーもさることながら、スラックネス、ガン・トークが全盛の時代において、カルチュラルなテーマを掲げた希少な作品であるからだ。
更にダンスホールのスーパー・スター達、シュガー・マイノット(Sugar Minott)、'Wrong Move'、フランキー・ポール(Frankie Paul)、'Gun Shot'、パパ・サン(Papa San)、Dance Inna Mount Zion'といった楽曲も当時の流行とは違う方向性を示したが、シーンに与えたインパクトは強烈な物であった。
その他にもココ・ティー(Coco Tea)、カッティー・ランクス(Cutty Ranks)、ジョニー・オズボーン(Johnny Osbourne)、ジョニー・P(Johnny P)といった人気のパフォーマー達も積極的に起用、ジャマイカのシーンへも多大な影響を与えた。スケンドン(Skengdon)の残したレーベル・カタログは、その独創的なサウンド・アプローチで人気を博し、シーンに重要な軌跡を残した。ベンツのエンブレムをモチーフにしたレーベル・ロゴからは堂々とした風格さえ感じられる。
2008/03/11 掲載 (2008/03/14 更新)