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Randys / 17 North Parade（ランディーズ / 17ノース・パレード）Text by Harry Hawks

60～70年代の20年間に渡ってジャマイカにおける音楽ビジネスの中心を形成した伝説のレコード・ショップ、レーベル、レコーディング・スタジオ。

Randys / 17 North Parade

設立	1958年
設立地	ジャマイカ　キングストン　ノース・パレード
主要スタジオ	Federal Randy's
設立者	Vincent 'Randy' Chin
プロデューサー	Patricia Chin Vincent Randy Chin
エンジニア	Graham Goodhall
関連アーティスト	Alton Ellis Cornel Campbell Don Drummond Ken Boothe Lord Creator Maytals Skatalites Stranger Cole
関連レーベル	Creative Calypso Hornet Impact Pat's

1940年代、50年代、ジャマイカの人々がサウンドシステムを聞くためにダンスに通ったという一般的な通説に反して、当時わずかながらの人々だけがラジオを手に入れることが出来た。バーのジュークボックス、ラム屋、アイス・クリームの出店などが多くリズム＆ブルースをストックしていたという。当時、ミスター・アイサ(Mr Issa)という1人のビジネスマンが島中のジュークボックスを所有していた。彼の従業員でだった1人の男はジュークボックスに投げ込まれた現金を回収し、すべての最新リリース曲がプレイされるのを保っていた。そんな冒険心に溢れた男の名前はヴィンセント・チン(Vincent 'Randy' Chin)だった。

1959年、ヴィンセントはキングストンのテネシー、ギラティンのイースト・ストリートとタワー・ストリートの角に小さな店を開き、ランディーズ・レコーズ(Randy's Records)と命名した。ビジネスは急激に成長を遂げ、2年後にはキングストンの商業地区の17ノース・パレード(17 North Parade)にある新しい物件に移転、すぐさまジャマイカを牽引する小売店ランディーズ・レコード・マート(Randy's Record Mart)としてその地位を確立した。ヴィンセントは1962年の夏にレコードのプロデュースを開始、ジャマイカの独立はヴィンセント・チンのプロデュースしたロード・クリエーター(Lord Creator)の'Independent Jamaica'によって幕を開け、ランディーズ(Randys)のレーベル、クリエイティブ・カリプソ(Creative Calypso)からリリースされた。また、ヴィンセントはメイタルズ(Maytals)がカシアス・クレイ(Cassius Clay)に送った至上のトリビュート楽曲'He's The Greatest'といった珠玉のスカ楽曲をいくつも制作するが、彼は６０年代を通してレコードの小売・卸売業に専念し、ジャマイカで音楽の先端を行く業者としてランディーズ(Randys)の評判を確立した。ランディーズでレコードがプレイされなければ、ヒットにはならないと言われたほどで、ヴィンセントと彼の妻パット(Pat)は地元から生まれる「国内の民族的な」生産物を宣伝し、流通させるという重要な役割を果たしたのだった。

「ランディーズはジャマイカのモータウンのようだった。我々は右、左、真ん中、的確に人々の楽曲を発表したんだ。もし君の楽曲がランディーズによって流通されなかったら、どこにも届かなかったさ！」クライブ・チン(Clive Chin)

1969年の春、ヴィンセントはノース・パレードに構えられた店の2階にランディーズ・スタジオ17(Studio 17)をオープン、最初にその階段を駆け下りてきたヒット録音はプロデューサーであるジョー・ギブス(Joel Gibson)のために録音されたレゲエ・ボーイズ(Reggae Boys)/パイオニアーズ(Pioneers)による'Them A Laugh And A Ki Ki'だった。グレン・ブラウン(Glenmore Brown)、ボブ・マーリー＆ザ・ウェイラーズ(Wailers & The Wailers)、ナイニー・ザ・オブザーバー(Winston 'Niney' Holness)、バニー'ストライカー'リー(Bunny Striker Lee)、オーガスタス・パブロ(Augustus Pablo)、さらにはリー'スクラッチ'ペリー(Lee Perry)などキングストンの音楽シーンに携わる人なら誰もがランディースの2階に設けられたスタジオを使うようになり、ルーツ・ロック・レゲエ、レベル・ミュージックの見本となり、多くのアーティストたちが残してきた傑作のほとんどがこの時期、17ノース・パレードで録音された物だった。

キングストンのミュージシャンやアーティストたちはランディーズの店の外（さらには店の横道チャンセリー・レーン）に集まり、セッションに参加するチャンスを手に入れるために待ったり、彼らのレコードが店でプレイされるのに耳を傾けたのだった。チャンセリー・レーンはキングストンの音楽同業者の間では人気の待ち合わせ場所で、「アイドラーズ・レスト」として知られるようになった。また、スタジオ17はヒットの生まれる場所としても知られるようになった。クライブ・チン(Clive Chin)による最初のヒットとなったオーガスタス・パブロ、本名ホレス・スワビー(Horace Swaby)によるメロディカをフィーチャーした'Java'はインパクト(Impact)からリリースされ、1972年を代表する最高のインスト楽曲として知られる。

インパクトから限定プレスでリリースされた希少な「Java Dub」としても知られる「Java, Java, Java, Java」は最初期における至上のダブ・アルバムと評され、この作品はクライブ・チン指揮のもとでランディーズの専属エンジニアだったエロール'ET'トンプソン(Errol Thompson)がミックスを施した。ジャマイカのレゲエ史において、彼は疑いなくすぐれた才能のあるレコーディング・エンジニアであり、彼の技術的、そして音楽的革新はレゲエの商業的ブレークの最前線で証明された。レゲエおける"音"への貢献は計り知れない。1975年、エロールはジョー・ギブスの保有した最新の16トラックで録音が可能なスタジオで働くためにリタイアメント・クレセント24番地へと移り住み、"マイティ・トゥー(Mighty Two)"の1人として称されるようにまでなった。

1975年、クライブ、ランディーズの仕事を行なうためアメリカに短期滞在。彼がプロデュースしたアルトン・エリス(Alton Ellis)がコーネリアス・ブラザーズ&シスター・ローズ(The Cornelius Brothers & Sister Rose)の'Too Late To Turn Back Now'をリメイクした楽曲はアルトンにとって大ヒット曲の１つになった。デニス・ブラウン(Dennis Brown)の'Cheater'、アフリカン・ブラザーズ(African Brothers)の'Hold Tight'などといった録音を制作。ランディーズ(Randys)の評判とそのリッチ条件から自身のレコーディング・セッションのためにミュージシャンを自由に選ぶことができたことから、スキン、フレッシュ＆ボーンズ(Skin, Flesh & Bones)やソウル・シンジゲート(Soul Syndicate)、バレット兄弟（Carlton & Aston Barrett）を起用した。

1975年の秋、カール・マルコム(Carl Malcolm)が予測しなかったクロス・オーバー・ヒット曲をもたらした。このヒット'Fattie Bum Bum'は彼がクライブの元から発表したヒット曲3曲の1つで、イギリスのナショナル・チャートで8位を記録。また'No Jestering'で聞かせたのカール・マルコムの熱烈な声は失恋者の役を担うには完璧だったと言えるだろう。この楽曲に続き'Miss Wire Waist'は同じく人気を集めたもろい失恋楽曲で、このレコードは中でもUKのレーベルからリリースされると一番のヒットを記録した。

チン一家がVPレコーズ(VP Records)を設立するためアメリカ、ニューヨークのクイーンズへ移住したのを期に、スタジオは閉鎖された。VPは世界における最大級のそして最も重要なレゲエの流通業者、もしくはレーベルとして21世紀のレゲエ・ミュージックそしてアメリカの音楽を担ってきた。クライブ・チンは活動的にVPの再発プロジェクトに関わっていて、ランディーズ(Randys)の伝統は続きかつてのスタジオはレコード販売のために使われている。ランディーズ・レコード・マートとスタジオ17は60年代、70年代とジャマイカ音楽のために中心的な場所を提供した。このレゲエ史において、彼らの役割に取って代わるものはけして存在しない。

2010/03/26 掲載　（2014/03/27 更新）